私の超高速中国語学習法(10) 技術書2冊の完璧な読破

私の超高速中国語学習法(10) 中国語書籍の読書「MS ACCESS2000使用手冊」,「VB.net入門経典」

今回は「Macintosh自学通」を読破してから約1年後の読書体験である。
まず「MS ACCESS2000使用手冊」は、私が香港へ旅行した時に電脳街で買って来たMS-Access2000・リレーショナルデータベースソフトの入門書である。
香港の書籍はその多くが台湾で出版されたものである。香港の現地人は広東語を使用するので、中国本土(大陸)の普通話は話せないし簡体字も読めない人が多い。香港の書店では、大陸の書籍を売っても商売にならないのだ。
この時、私はまだ中国語検定を受験するということは考えておらず、業務多忙のため少ない自由時間の中、ただ有意義に中国語の知識を向上させようと、急がず、焦らず、着実に学習していた。
私の仕事の関係上、この頃はデータベースソフトを使用した社内原価管理システムの改良の必要からデータベースソフトの知識も必要になり、それならば中国語書籍を読みながらのデータベースソフト入門も悪くないのではないかと考えたからである。
台湾で出版されたコンピューター技術の入門書は、中国大陸で出版された「Macintosh自学通」に比べるとかなりテイストが違っている。本文がカラー刷りでない以外はイラストや画像が多用されており、文章も読み易く、文字も大きく、CD−ROM付きで、日本の入門書と良く似ているのだ。このため読み進むには難しくはなさそうであったが、唯一の問題は、当時の私はデータベースソフトについて何の知識も持っていなかったということであった。
このため、最初から文章の意味を完全に理解しなければ次に進めないというプレッシャーがあった。中国語の和訳は本当に難しいと初めて実感させられたのであった。
中国語は、ヨーロッパ言語の様に、品詞により単語の綴りが変わることがない。例えば「花」という漢字は名詞としても動詞としても使用される。「努力」という単語はこのままの形で動詞にも名詞にも、更に副詞にも形容詞ともなり得る。これをどう区別するかは、その単語と別の単語の修飾、被修飾関係による。だから品詞分類を完全に理解していないと文章の意味が見えて来ない。更に文語的な言い回しがたまに出現するので、その当時の私の中国語の基礎知識では理解に苦しんだ。日本で出版された初級の中国語教本で、中国語の文語文の解釈についてまで解説したものはそれまで見たことも無かったからである。これにより1ページの文章で、せいぜい200文字位しかないものを30分掛けて読むなどということも少なからず発生した。
この様にして苦労しながら、全文をほぼ完璧に和訳できたことで、MS-Access2000についてはテーブルの作成、プライマリーキーの定義の仕方、検索、並べ替え、フォームの設計と作成、印刷、果てはマクロの組み方とSQLの記述方法に至るまですべてをマスターした。これでMS-Access2000の操作に自信をつけた私は、日本語の書籍でMS-Access2000 VBAによるデータベース処理プログラムの設計に関する技術書を数冊読み、MS-Access2000 VBAADOを駆使したプログラムの開発技術を習得した。これで、社内の原価管理システムで、MS-Access97+DAOという旧テクノロジーを使用したシステムの全面改良に成功した。
今回想すると、この時はまだ中国語検定の受験を考えていなかったので、文章が簡体字でも繁体字でも関係無いと思っていたが、この時に繁体字の書物を読んだということが私の学習の阻害になっていた。中国語検定では作文問題が出題されるが、当然ながら筆記試験である。加えて正確な簡体字で筆記しないと減点されるので、日本語で使用される漢字とも、繁体字とも違う簡体字の書き方を覚えるという重要な学習をしなかったことになるのだ。過去にも掲載したが、語学とは「読む、話す、聞く、書く」の能力を平均して高めていくという学問であり、重要な柱の一本を欠いたままの学習になっていたのは残念に思う。
次に、その3年後とまた時間が飛躍する(この時は中国語検定2級に合格していた。)が、これもまた私が中国で買って来た「VB.net入門経典」という入門書についてだ。
これは、WROX社(www.wrox.com。米国では信頼できるプログラミングガイドブックの専門出版社として知られている。)のライセンスを受けて中国・清華大学出版社から出版(2002年5月版)された本だ。日本版は未発売、688ページと厚い本である。
この時は、今後VBAではなく、本格的なwindowsアプリケーションの開発技術を習得したいと考えていた。しかし、今更Visual BASIC 6だとか、オブジェクト指向の波に乗り遅れたC言語から入門するのも時代にそぐわず非効率的だと思っていたので、最新技術のMS-.Net FrameworkとMS-Visual BASIC.Netを一から学習したいという意欲を持っていた。それならば今回もまた中国語の書籍で入門しようとチャレンジを決意したのだ。
この時も、全く未知の技術を中国語文献だけから得るという作業になり、文章を完全に読解しなければ先に進めないというプレッシャーとの戦いだった。
巻頭から100ページ位は私が既に知っているBASIC言語の解説が続いたが、オブジェクト指向プログラミング技術の基礎となるクラス設計の章に入ってからは、意味不明の用語が続出し、読解速度は急速に落ちた。どうしても理解できない項目はインターネットを使って調べながらの和訳になったが、自分なりに中国語のオブジェクト指向用語(対象、類、方法、事件、公有、継承、覆蓋などだ。)を日本語に置換して読み進めた。
この本の読破にも、10ヶ月近くという長い期間を要した。苦労の結果、この入門書に記載されたVB.Netの文法、簡単なフォームと初歩的なプログラムの作成、クラス設計と継承の概念、クラスへのイベント・プロパティー・メソッドの組み込み、アプリケーションプログラム作成の詳細事例、ADOを使用したデータベースへのアクセス、WEBフォームとWEBサービス等の記載内容を90%以上は理解できた。これでMS-Visual BASIC.Netの基礎知識を習得した私は、続けてMS-Visual BASIC.Netプログラミングについての内容で、日本国内で発売されている中で最も難易度が高いと思われる5冊組の技術書をインターネットで購入し、3ヶ月程で理解し、その後10ヶ月かけて、生まれて初めてwindowsアプリケーションプログラムの開発に成功した。これはwindowsのシステムユーティリティーで、フリーソフトとしてVectorに掲載させてもらった。(私の個人情報が特定されるので、ソフト名までは教えられません。)

私の超高速中国語学習法(9) 一石二鳥読書法

初学者ながら、ここまで驚異的なスピードで発音とヒアリングの能力を高めて来た私が次に力を注いだのは、文章の読解能力のトレーニングである。
ここで、次に使用する学習書として何を選んだら良いかが課題となった。
学習開始当初に、「新しい現代中国語語法」という250ページ位の教本を買って読んではいたが、読んだ割に余り記憶されていないのだ。単純に「面白くない」のだった。
ならば文法の学習は無視して、好きな分野の書物を対象に、いきなりまとまった文章を無理にでも和訳して読破してみようと思い立った。さすがにこうなると日本国内の書店で販売されている物ではテーマが狭すぎ、どれも私の趣味(小説などの作り物は嫌い)に合わないのだ。
そこで、私の業務能力の向上に役立つコンピューター関連の技術書を、たまたま上海へ短期間出掛けると言う知人に買って来させた。
当時、私はパソコンでWindowsのほかにMacintoshを使って仕事をしていたこともあり、中国語によるMac OS 8.1の入門書を教材として使うことにしたのだ。書籍名は「Macintosh 自学通」と、タイトルからしていかにも中国語の趣が漂う、超初心者用の入門書で、日本ではさしずめインプレスの「できる」シリーズに相当するものだ。だが中国語の書籍は日本語の入門書とは大きく違い、白黒印刷で挿絵や画像は少なく、細かい文字がビッシリと並べられている。その代わりに内容は充実しており、少ないページ数ながら広い分野をカバーしているのが特徴だ。
文章の読解には第1ページ目から困難を極めたが、始めは文法構造については余り気にせず、文章の大意が掴めれば良しとして読み進めた。私はMacintoshの操作方法については熟知しており、この本に記載されている技術的な内容は既に身に付けていたので、読んでも技術的に高度で分からなかったり、小説の様に、重要な部分を読み飛ばすと後の展開が理解できなくなるという心配は無かった。
最も苦労したのは単語の和訳で、いきなり「双撃」とか「屏面」などの現代的なコンピューター用語が頻繁に出現し、当然ながら新しい時代の用語なので一般的な辞書には掲載されておらず和訳不可能なのだが、それらが後の文章に何度も現れると「この単語はこういう意味で使われているのだ」という確信が持てるようになる。このようにして「双撃」はダブルクリック、「屏面」はデスクトップ画面という風に一つ一つ単語を解釈しつつ虫食い算パズルを解く様に読んでいくと、文法などそれ程気にせずとも文章の内容がハッキリと見えて来る。この方法に慣れると、初めて見るコンピューター用語も直感して和訳できるようになった。「調制解調器」とはモデム、「文字框」とはテキストボックス、などの様にである。これで非常に多くの中国語のコンピューター用語を暗記してしまった。
また、コンピューター用語以外に初めて覚えた単語とその読み方や文法(特に構文関係)は重要なのでノートに書き写したことにより最要点を整理したノートが出来上がり、復習にも役立った。
結局、この技術書の読破作業は、仕事で忙しく、なかなか自由時間が取れない中、他の分野の中国語学習の合間に行ったことで約4ヶ月を要したが、まともな技術書1冊をほぼ完全に理解したことで、この技術書を読み終わる頃にはコンピューター関連の中国語書籍の類は辞書無しで読み進めることが可能になった。この理由は、技術書というものは基本的にその技術を知らない読者に向けて分かり易く書かれたものであり、複雑な言い回しを避けて構成されているため、文章中で使用される構文も概して簡単で同じ様な物となっているからである。更にMacintoshの操作方法で今まで知らなかった知識や裏技も同時に身に付けることもでき、文字通り一石二鳥の効果を生む学習方法だと感じると同時にこれを格別に有効な学習方法として位置付け、継続することを決意した。
これをお読みになっている方で、この様な一石二鳥読書法をやってみたいと思った方には、作り物の文章よりも漫画や技術書を読むことをお勧めする。まず前述したが、小説は薦められない。日本文学の中国語翻訳版などで内容が分かっている物を読むのならば良いが、小説は文章の言い回しが必要以上に複雑で、終始辞書との格闘になると思われるからだ。中国語初級学習者には不向きである。
一方、漫画はお勧めである。これを執筆中の私も現在「漫画・理解日本」という中国で出版された漫画を読んでいる。中国語の漫画を読むという利点は、文字として読んだだけでは分からない名詞、動詞なども絵を見ることで理解でき、辞書無しでも読み進められるということである。
例えば文中に「銜(xian2)」という動詞が出現した時、これが漫画でなく、読者がこの文字を「くわえる」と訓読みされる漢字であるということを知らなければ辞書を引くことになるだろうが、漫画であれば絵を見て「銜(くわ)える」という動作を示す動詞であることが分かることになる。ただし、漫画の場合は文章を読まなくても意味が理解できてしまうため、緊張感の無い文章読解になってしまうので注意して欲しい。
私はこの時コンピューター関連の技術書を教材として選定したのであるが、人それぞれ専攻分野や趣味が違うので、医学に興味のある人は医学書、スポーツに興味のある人はスポーツの入門書・上達法などの様に、読みたい分野や得意分野の書物を選べば良い。小説などの作り物でなければ、どこから読み始めても構わないし、分からない部分は飛ばしても良いからだ。自分の好きな分野ならば、文章の意味が分かれば楽しめる。とにかく読んでいて楽しめなければ一石二鳥の学習効果は生まれない。次回は、私のその後の中国語書籍の読書による学習がどれだけ高密度に進められ成功したかを紹介する。

私の超高速中国語学習法(8) クレイジー・クレイジー・リスニング

2004年位、中国で「クレイジー・イングリッシュ」という映画がヒットした。これは、簡単な挨拶文(Hello! How are you?など)を、大声でハッキリと、他人が聞いてウルサイ!!と怒鳴られる程何度も発音することで、英語を体で覚えようという初学者用の独習法が効果的だということで老若男女を問わぬブームになり、しまいには映画化されるほどの人気を博したという教育ムーブメントである。今回のタイトルと内容はこれを題材にした。
さて、私がマルチメディア学習教材の次に選んだ教材は、「はじめての中国語会話」というCD付きの初心者向け学習書だった。これも書店で数冊の候補を選んだ中から、CDに収録された会話のレベルが入門から応用まで広くカバーされていたことと、漢字の読み方を片仮名で表記する際に濁音を使用していた正規学習法であったことで購入を決定した。書籍の中身はともかく、私はとにかくCD教材が欲しかったのだ。
この学習書の添付CDでは、まず始めに中国語の漢数字(一〜十、百、千・・)から始め、私、あなた、彼などの代名詞、常用される動詞・名詞、極めて簡単な挨拶文などの「初歩の初歩」から録音が始められていた。続けて数十秒の中国語会話例文による単元が100近くある。これらをすべてマスターすれば中国語会話はおろか、文法知識と作文能力、漢字の判読能力、語彙力、ヒアリング能力は相当高いレベルに到達すると見て取れた。
私は第1回の単元から聞き取りの練習のつもりでCDを聞き始めたのだが、発音をマスターしたばかりで、まだ数少ない漢字の読み方しか知らない私には、当然ながら初めて聞く中国語文章は全く聞き取りが出来なかった。そこでこのCDの「初歩の初歩」レベルに戻り、これをすべてマスターしなければ先に進まないということにした。この時、CDの音声をカセットテープに録音し、通勤中の車の中や部屋で流しっ放しにして、同時にこれを発音し続けた。同じ録音内容の繰り返しに飽きてやる気が無くなったが、更に我慢して聞き続けた。我慢して聞き続けた事で「こんな程度で挫折したら、より難しい今後の学習さえも思うように進まないぞ!」という反作用が現れ、却って学習効果が高まった。これが私の名付けた「中国語版クレイジー・リスニング」の始まりである。
初めてのクレイジー・リスニングには1週間を掛け、次の「各単元のヒアリング」に向けた学習の基礎を固めることに成功した。そして次に各単元の会話文のヒアリングに移った。
この時も、CDの録音内容をカセットテープにダビングしたものを流しっ放しにした。それも、1つの単元を2回繰り返して録音することで、反復による学習効果を高めた。だが、CD教材の「初歩の初歩」から第一単元までのレベルのギャップは依然大きく、中国語会話のスピードが速い上に新しい単語が続出し、内容を理解することも、これに合わせて喋ることも困難を極めた。
だが幸か不幸か、この頃体調を崩し、風邪で発熱して会社を休むことになった。私は、「これはクレイジー・リスニングに集中できる絶好のチャンスだ!名付けてクレイジー・クレイジー・リスニングだ!!」と考え付き、朝から晩まで枕元でカセットテープを流しっ放しにし、時に集中して聞き取り、時にうなされ、眠りながら聞き続けた。果たして、この方法は絶大な効果を発揮した。
中国語の会話リズムを感じ取る能力を無意識に身に付け、まだ文法もロクに学習していない段階から、文章を聞いただけで簡単な文法構造が理解できるようになったのだ。さらに、このCD教材程度のゆっくりした会話速度ならば、あらゆる漢字の発音を聞いて間違えずに頭の中でピンインに変換できるようになったのだ。これは、例えばjizhongと聞いてそれが「集中」という単語だとは分からなくてもピンインがjizhongであると完全に認識できるようになったという意味である。この段階は、中国語検定試験準4級のヒアリング問題で100点を獲得できるレベルである。
その後も時に及んでクレイジー・リスニングを続けた事により、3ヶ月後には学習書「はじめての中国語会話」の全単元のうち前半の約半分は暗誦できるようになった。当然ながら、暗証した文の文法構造、単語も記憶された訳で、これで身に付けた作文能力、語彙力、ヒアリング能力は今でも私の中国語運用知識の基礎として重く据えられており、その後の検定試験などにも非常に役立っている。

私の超高速中国語学習法(7) 発音をマスターした者の視点から(3)

中国語発音の間違った教育については、まだ強く抗議して書かせてもらいたい。
私は、まともな英語教育を受けた者の一人として言わせてもらうが、英語を始め外国語には日本語の音声周波数を超えた高周波の子音があり、日本人では多少のトレーニングを積まないと発音・聞き取りが出来ないということを皆さんは御存知であろう。私は英語の子音の認識トレーニングとして中学・高校時代の英語学習に続けて洋楽を聴き続けて来たこともあり、高周波数の子音を聞き取る能力を少しは磨いて来たので、英語同様に高周波の子音が含まれる中国語についても苦労せず学習を進めて来ることができたのだが、世の中には近代の学校教育で英語を履修していながら英語のヒアリング能力のほとんど無い者がまだまだ多過ぎるように思われる。極端な例を挙げれば、ベッド(bed)をベットと発音・表記したり、人間ドック(dock)を人間ドッグ(犬)だと確信していたり、プロ野球の球団名で楽天Eaglesとあればイーグルズと読むべきものを楽天イーグルスと読むなどのことである。これらに共通なのは、子音が清音か濁音かの識別能力が全く無いということである。こういう誤解に気付かない人は、私には実感が湧かないが、本当にbedがベットと聞こえるのだろう。
この様な、聴覚障害でなければ即ち「日本語耳」の多数の人間が中国語を聞くと、中国語の有気音と無気音がすべて日本語の清音に聞こえてしまうのであろう。私にはハッキリと識別できるので、ただ「〜であろう」と推測するしかないが。
もう一つ、これは私の推測であり、私が何回も指摘する「無気音の日本語表記に濁点の使用を認めない不正教育」者への譲歩であるが、清朝が滅亡した頃の北京語は、現代中国語とは違って、無気音は日本人が聞いて本当に清音や半濁音に聞こえたのではないかということである。北京がbeijingではなく、peking(北京大学は現在も英語の正式名称はPeking Universityである)と綴られていたことと、中国の地名、人名等の当時の日本語表記はすべて清音だけになり、濁音を使用した例が一つも見つからないこと、戦前生まれと思われる古い時代の中国語学者の執筆した教本では、濁音を許さない表記法を頑なに守っていることがその理由だ。これは、当時の北京市内とその周辺では、旧王朝関係者と関係の深い上流階級人、文化人が庶民の言葉とかけ離れた「北京官話」を話しており、外国人もこの北京官話を話す人物と主に交流したからであろう。
だが、中国は国土が広く、地方によって数多くの方言があり、現在もなお中国国家が標準語として定めて数十年経つ「普通話」を日常的に話さない中国国民が70%以上いる。このような国民の多くは日常会話で反り舌音を使わず、有気音と無気音の区別が日本語と同じ清音と濁音になる方言を話す人が多い。私自身も上海市広東省安徽省江蘇省河南省四川省、香港、台湾などの現地人と会話して実感しているが、特に中国大陸南西部の方言には日本語の発声と互換性のある発音が多く、安徽省の現地人の会話では「到了(daole)」が「どら」の様に、極めて日本語に近い発音によってなされていたのには驚いた。
このことから、広大な中国の人民の多くは日本語の様に有気音と無気音の区別を日本語と同じ清音と濁音により区別していることによって、標準語も始めは北京官話に近かったものが次第に訛りを生じて現在のような「現代中国語の普通話」になったのではないかということが私の推測である。私は当然ながら現代中国語から中国語の学習をスタートさせた者であり、北京官話などは聞いた事が無く、初めて「再見」という単語を聞いた時、これは紛れも無く、清音ではなく濁音に近い発音でザイジエンと聞こえた。現代中国語の学習者の方々も、古い時代の中国語学者は有気音を清音を使って発音、表記するということは御存知無いであろうし知る必要も無く、わざわざ現代において北京官話の発音に言及するような「不正教育」は、学習の妨げ以外の何物でもない。更に付け加えれば、現代中国語の発音学習カリキュラムや国際表音記号による表現方法自体が北京官話の時代の産物であり、生の現代中国語にそぐわない、間違った古臭い学習方法になっているとも言えると私は考えている。
更に、私は次の様な複数の不正教育者の誤った教育理念を発見した。
・「中国語は、フランス語と並んで世界で最も聞こえの美しい言語である。これは言語を田舎臭く感じさせる成分である濁音が使われていないからとも言える。だから無気音も清音で発声すると美しく聞こえる。」(戦前生まれの中国語学者、鐘ヶ江××という人の著書より)
・「北京はペイチンと読みます。ベイジンなんて、恥ずかしくて言えません。」(Yahoo知恵袋、田子という知ったかぶり回答者。台湾語に偏った知識で中国語学習者を誤解させるのが得意。)
そもそも言語とは、聞こえの良さや美しさ、恥ずかしさの有無で優劣を付けるものではないはずである。ならばフランス語と中国語は聞こえが良いから良い言語で、日本語やタイ語アラビア語は汚い、恥ずかしい、悪い言語なのだろうか。自分が得意な分野の言語だけを美しいと表現する独善的な考えで、論理の通らない教育法を勝手に奨励するのは正当性に欠けると思うが、読者諸氏の考えは如何なものであろうか。

ファミコンウォーズ キメンハントウを青軍で8日クリアー

今回もまた、中国語のトピックと離れ、スポットでファミコン関連のトピックをお送りする。
 初代ファミコンウォーズについてのWEBサイトを眺めていたところ、キメンハントウを青(ブルームーン)軍で10日クリアーというコンテンツを載せていた人がいました。私はこれを見て「こんな程度で喜ぶな!」と思いました。
 ファミコンウォーズタイムアタック、つまり各マップを最短日数でクリアーしていくという遊び方においては様々な技術の蓄積があり、ファミコンウォーズフリークの間では古くから情報が交わされています。ここで私なりの攻略技術を元に、青軍によるキメンハントウのタイムアタックをドキュメントしてみました。

1. マップ概略
 北西に赤(レッドスター)軍の基地が、南東に青軍の基地が配置され、多くの森林と山脈が侵攻の阻害となっている。空港も軍港も無い。山脈は2箇所で途切れているが、ここを敵軍に塞がれると侵攻が困難になる。 最大の特徴は、ゲーム開始時点ですべての都市が青軍に占領されているということであり、初期軍事費は赤軍4,000G、青軍24,000Gという極端なハンディーが付けられている。

2. 攻略のシステム設計
 青軍軍事工場から赤軍基地までの最短移動距離(歩兵ではなく戦車の歩数。つまり森林は2と数える)は、山脈を北上するルートと西を行くルートではどちらも18である。つまり生産したユニットを2分し、北ルートと西ルートにバランス良く配属する必要がある。
 また、移動距離が18ということは、生産から敵基地附近までの移動日数はセンシャA、ソウコウユソウシャでも3日必要だということである。これは、ターン数8日でクリアーするならば5日目にはユニットを生産していなければならないということになる。
 また、このマップでゲームを1度試験的にプレイすることで、赤軍のユニット生産と進軍の傾向を知ることができる。これで分かることは、以下のようなことである。
(1) 2日目まではホヘイを全力で生産し、都市の占領を最大の目標としてくる。
(2) ホヘイ部隊は、東に向けたルートと南に向けたルートにバランス良く配属される。
(3) 余剰のホヘイ部隊は、山脈を超えて青軍基地に向け侵攻する。
 さて、青軍にとって絶対有利な状況下での攻略技術であるが、主に以下のポイントに重点を置く。
(a) 敵が初期に生産するホヘイの大軍には、主にソウコウユソウシャを当てて撃破する。
(b) 自軍はホヘイ及びセントウコウヘイを生産しない。2日目から赤軍による都市の占領が続くが、こちらもホヘイなどを送り込んで都市を奪還しても、最短日数攻略の阻害になるだけである。よってある程度都市が赤軍に占領されるのは不可抗力と割り切り、自軍はセンシャ等の高級ユニットで赤軍の軍事工場の占拠(占領という意味ではない。自軍のユニットが軍事工場に居座ること。こうすることで敵軍はどんなに軍事費があっても、戦闘ユニットの生産ができなくなる。)を目標に敵基地を目指し移動させる。

3. 戦闘ドキュメント
戦闘条件は、赤軍はIQ=200のコンピューター、青軍はプレーヤーである。
* 第1日
赤軍は4,000Gの軍事費をフルに使い、ホヘイ4部隊を生産。
青軍は西半分の軍事工場で2部隊のソウコウユソウシャを、東半分の軍事工場で2部隊のセンシャBを生産。
本来ならば、敵軍のホヘイを有利に撃破するために、東半分の軍事工場でもソウコウユソウシャを生産するのがセオリーであるが、東半分の軍事工場で生産したソウコウユソウシャが森林に阻害され遠くまで移動できない(平地1+森林1+平地2+森林という移動行程では、移動距離6を持つユニットが最後の森林まで移動できず、移動可能な歩数が1歩残ってしまうのがもったいない。)ため、センシャBなどの移動距離5のユニットを使っても同じ歩数だけ移動できてしまう。マップの森林の配置からこのような現象が起きてしまうのだが、こういった細かな地理条件も考慮してユニットを効率的に移動させないと、ユニットがあと一歩の所で敵を攻撃できずに終わるなどして涙を飲むことになる。
ここで生産するセンシャBは、敵軍が後に生産するセンシャBと直接戦うのに充分な戦闘能力をもたらす。
* 第2日
赤軍は都市の占領を始め、また4,000Gの軍事費をフルに使いホヘイ4部隊を生産。これで赤軍のホヘイ部隊は計8部隊となる。これだけホヘイが増えると、簡単に撃破することは難しい。センシャAやソウコウユソウシャをこちらも大量に生産しないと対応できない。
 青軍は、北ルート侵攻隊と西ルート侵攻隊に分かれてソウコウユソウシャを敵ホヘイに全力で接近させる。 1マス後にセンシャBが追従する。軍事工場ではセンシャA1部隊、ソウコウユソウシャ1部隊、ジソウホウB1部隊を生産する。
センシャAとソウコウユソウシャは、ホヘイの大軍を撃滅するために必要。またセンシャを使えば、敵ホヘイを撃破しつつ最後は敵の基地に侵攻し、敵の高級ユニットを直接攻撃する能力もある。ジソウホウBは一般論として「有効な利用法が確立されていない」ユニットであるが、ここで脚光を当ててみたい。
このマップでジソウホウAを生産したとしても移動距離4は少な過ぎ、その砲台が火を吹くまでに敵軍が陥落してしまうため始めから生産は考えるべきではない。だが、間接攻撃というものは無視できない程の効果があり、攻略の中盤で敵軍のセンシャBを迎え撃ったり、攻撃を受けて2〜4名になった敵ホヘイ部隊を撃滅し、直接攻撃のできるユニットを1日でも早く敵基地周辺に送り込むための支援にはジソウホウBが欠かせない存在となる。
* 第3日
赤軍はホヘイにより2都市の占領に成功、尚も青軍の都市に向け進軍。次にセントウコウヘイ1部隊を生産。
青軍は、北ルートに進んだソウコウユソウシャがホヘイと交戦し、まずは占領を阻止。センシャBも順調に追従する。2日目に生産したセンシャAとソウコウユソウシャは北ルートへ配属。
西ルートへは、ソウコウユソウシャとセンシャBの部隊が全速力で敵ホヘイ部隊に向かう。
軍事工場では、センシャA1部隊とセンシャB1部隊を生産。

* 第4日
赤軍は東ルートと南ルートに分かれ、都市の占領作戦を継続中。更に1都市を占領した。センシャB1部隊を生産した。
青軍の北ルート侵攻隊は、ホヘイを順調に撃破しながら、占領を完全に阻止し続ける。次回のターンでセンシャAとソウコウユソウシャは敵軍基地に最接近可能。
西ルートは敵ホヘイ部隊の侵攻を阻止できず、更に1都市の占領を許す。ソウコウユソウシャ1部隊とセンシャB1部隊でホヘイを弱体化するが、1部隊も撃滅できない。ジソウホウBはまだホヘイ部隊に接近できない。軍事工場ではセンシャA1部隊とセンシャBを1部隊生産。
* 第5日
赤軍の東ルート隊は、青軍のセンシャ及びソウコウユソウシャの猛反撃によりホヘイ2部隊、セントウコウヘイ1部隊に減少。これ以上の都市の占領は不可能となった。南ルート隊は都市を更に1つ占領。山脈横断道路附近に移動し、青軍の侵攻を阻害している。センシャBを1部隊生産。
青軍のジソウホウBがここで活躍。占領中のホヘイ部隊に打撃を与える。軍事工場ではセンシャA1部隊、ソウコウユソウシャ1部隊を生産。

* 第6日
赤軍のホヘイ1部隊が山脈を超えて青軍の都市に接近を図る。東ルート隊の劣勢を挽回するためにセンシャBが青軍のソウコウユソウシャを攻撃する。ソウコウユソウシャ2部隊を生産。
青軍であるが、北ルート隊は敵軍のセンシャBに打撃を与えつつ敵基地附近に移動。尚もセンシャAが北ルートで基地に向かう。
西ルート隊は、ジソウホウBによる支援を受け、直接攻撃隊がホヘイとセンシャBを撃滅しつつ北上を開始。軍事工場のセンシャAとソウコウユソウシャは西ルートに配属する。
* 第7日
赤軍の東ルート隊は、センシャB、ソウコウユソウシャ各1部隊と弱体化したホヘイ1部隊のみになる。南ルート隊もソウコウユソウシャとホヘイ各1部隊が奮闘するのみであるが、この状況下で思いもよらぬビッグチャンスが訪れる。赤軍が約8,000Gの軍事費を保有していながらセントウコウヘイを1部隊生産しただけでターンを終了したのである。これはコンピューターの戦闘アルゴリズムではよく発生する現象であるが、次回のターンで強力なユニット(私が確認した結果次回はジソウホウAが生産された。)を造るための貯金なのである。
青軍は、敵基地のセントウコウヘイを取り囲み軍事工場を占拠すべく戦闘ユニットを集結させた。この時注意すべきは、セントウコウヘイを活かさず殺さずの状態にしておくことである。
青軍の戦闘ユニットも、ここまでの移動中の交戦で1部隊のユニットの台数が1〜7台程度に減少してきているため、次のターンで赤軍のセントウコウヘイに攻撃され、軍事工場の占拠に成功したユニットが撃滅されると次回はジソウホウAが生産されてしまう。また、赤軍のセントウコウヘイを弱体化させても4人以上であれば、次回のターンでは補給を受けて6人以上から成るセントウコウヘイ部隊が、最も弱体化した青軍の戦闘ユニットを狙って攻撃に出て来ることが考えられる。これで青軍のユニットが撃滅されれば上記と同じ結末である。
セントウコウヘイを撃滅させ、敵基地も同時に自軍のユニットで占拠しても良いのだが、その分残った赤軍の部隊(特に赤軍東ルート隊のセンシャB、ソウコウユソウシャは被害が少ない。)を掃蕩できる部隊が手薄になり、最悪の場合8日でクリアーできない恐れもある。
 よって、残存台数の多いユニットは敵軍事工場を占拠すると同時にセントウコウヘイをぶっ叩き、弱体化したユニットは占拠するのみで交戦しないで放置したり、合流させるという技術が求められる。 私は長年の経験により、セントウコウヘイを攻撃して1人残しただけの状態にし、台数3台以上のユニットを敵軍事工場に占拠させることに成功した。こうすれば、次回のターンでセントウコウヘイが3人に増えても3台のセンシャBを撃滅することはほぼ不可能だからである。
 最後にセンシャAとソウコウユソウシャを生産したが、軍事費が余ったため生産しただけであり、もうここまで来れば、次回のターンでは現存の部隊だけで敵部隊を全滅させることは充分可能だ。

* 8日目
赤軍のセントウコウヘイは補給を受けて3人に増え、3台に減った青軍のセンシャBと交戦するが、結果[セントウコウヘイ2人:センシャB1台]で撃滅できずに終わる。私の計算通りだ。あとは残る戦闘ユニットが青軍と奮戦する。
敵基地のセントウコウヘイが残存したために、赤軍はユニットを生産できず、多額の軍事費を残したままこのターンを終了した。
青軍はまず敵基地のセントウコウヘイの残り2人を、センシャA3台の攻撃により易々と撃滅。続けて強力な後方支援部隊の力により残存部隊に攻撃を浴びせ、赤軍を全滅させた。



4.考察(7日クリアーに向けた可能性を示唆)
 第1日で生産したソウコウユソウシャ2部隊は、赤軍の複数のホヘイ部隊に大打撃を与える活躍を見せたほか、同時に生産したセンシャBも最終的には敵基地附近に到達し、軍事工場の占拠に成功した。うち1台は弾切れとなる程の高い稼働率を記録した。ホヘイやセントウコウヘイを生産しない作戦にも誤りはないと確信できる。
第7日のドキュメントで述べた通りであるが、7日目に赤軍が生産したセントウコウヘイ1部隊を同日の青軍の攻撃ターンで撃滅させることは可能である。だが、赤軍の東ルート隊の部隊が強力なほか、赤軍南ルート隊のホヘイ部隊を掃蕩するのは7日目がやっとの状況であり、7日でのクリアーは絶対不可能ではないが課題が多い。この問題の解決には4〜5日に生産する部隊の編成を考慮することが必要であるが、センシャAは他のユニットで代用できないだろう。
 結果として8日クリアーはこれまでの示例により容易に達成できるのだが、一層の戦略研究により7日でクリアーすることも可能であるとの見方を示したい。
私自身、今後もこのゲームのタイムアタックを楽しんでいきたいと思っており、読者の方からの技術提供などがあればお寄せいただきたい。
 (お願い、私の以前の投稿「ファミコンウォーズの高射砲はこの様に見える!」もお読み下さい。)



私の超高速中国語学習法(6) 発音をマスターした者の視点から(2)

今日は、中国語の有気音と無気音の違いに対する私の認識を述べる。
私は中国語の発音を特訓したことが原因で、今では日本語の濁音の発音ができなくなっている。
中国語の子音のk/g,q/j,b/p,t/d,zh/ch,z/cでは、有気音と無気音が対になって存在する。これが日本語のカとガ、チとジ、バとパ、タとダ、ヅとツの清音、濁音の組み合わせに相当する。元々日本語には存在しなかった濁音とは、中国語のこれらの組み合わせを正確に分別するために考えられたものであると言われている。よって、日本人は濁音を使用することで中国人との音声による円滑なコミュニケーションを図って来ることができたのである。更に清音、濁音の他にも、古い日本語ではヰ、ヱをイ、エではなくウィ、ウェと発音(これはヰ、ヱの表記の元になる「為」、「恵」の漢字が中国語でwei「ウェイ」hui「ホェイ」と発音されることとほぼ一致している)していたり、昭和時代初期以前に生まれた人は、一部の特定な漢字をカ→クヮ、ガ→グヮというルールで発音するよう教育されている(小泉八雲の「怪談」は英文でkaidanではなくkwaidanと表記される。濁音が清音になっている違いはあるが、中国語の「怪:guai」という漢字の読みと一致する。)こともまた中国語によるコミュニケーションを図りやすくするために日本人が考案したものと考えられる。よって中国語の発音を日本語で表記する場合は、これらを積極的に利用した方が中国語の発音についての理解を深めるのに役立つことになると考えられる。
だが、中国語の有気音と無気音の違いはそのまま日本語の清音と濁音にはならないことを私は承知だ。私も中国語の発音を学習して間もない頃は、無気音を日本語の濁音で発声して「あなたの発音は有気音に聞こえる」と指摘されたものだが、これを素直に聞き入れたり、有気音と無気音の発声法の違いを更に深く学習したことにより、今では日本語の濁音を中国語の無気音で発音するようになってしまったのである。日本人の聞き手には私の発音が少し異様だと思われることもあるが、日本語でのコミュニケーションにおいては全くと言っていい程障害は無い。現在、すっかり中国語の有気音・無気音の区別を熟知して無意識に正確な中国語の発音ができるようになっているが、尚も言わせてもらえれば、中国語の無気音を清音で発音するということは間違っている。
さて、ここで次のリンクをクリックし、当然ながら正確な中国人による中国語の発音で有気音と無気音の違いを皆さんの耳で聞き比べていただきたい。百聞は一見に如かずではなく、ここでは「百見は一聞に如かず」という喩えが通用すると思う。
paobu nanjing
始めのpaobuは、ジョギングをするというニュアンスの動詞または名詞である。次のnanjingは南京という地名である。間違った中国語教育法では、日本人にはパオブー、ナンジンと聞こえるこれらの単語をパオプー、ナンチンと発音せよとなっている。
この中でpaoが有気音、buとjingが無気音である。聞いてみれば違いがハッキリと分かるであろうが、有気音はまず始めに破裂音や摩擦音などの子音が強く発生し、子音の発声が終わった後に急激に声帯を震わせて母音を発声する。一方、無気音では子音をそれ程強く発声しないが、有気音との明確な違いは母音の発声が子音の発声とほぼ同時に、それも穏やかに行われるということである。これによって、遠くにいる聞き手が子音の持つ高い周波数の音声を聞き取れなくても、母音の発声タイミングと発声の瞬間が急激か緩慢かの違いで有気音と無気音の区別が可能なのである。
プロレスラーのアントニオ猪木は、全盛時代、試合に勝つ度にリング上で「ダァーーッ!!」という雄叫びを上げたが、これを聞いて「あれは、実はタァーーッ!!と叫んでいるのだ」と言った日本人は一人もいない。
私自身はプロレスの生興行を数回観戦した経験を持つが、プロレス会場では大勢の観客がいて大変に騒々しいため、体格が良く声も一般人より遥かに大きいレスラーがリング上で何か意味のある言葉を大声で発しても、リングサイドから20mも離れた観客席ではまずその言葉は聞き取れない。これは周囲のノイズによりレスラーの音声から子音成分の音声がほとんどカットされてしまっているからである。聞こえるのは母音だけとなる。しかし私達日本人がこれを「ダァーーッ!!」だと認識できるのは、母音の発音直後の聞こえ方により、その子音が濁音の「ダ」に最も近いと推測する能力があるからである。決して「タァーーッ!!」に聞こえたりしないのは、人間の聴覚が濁音と清音の母音の識別に優れているからと思われる。
実はこの推測能力は中国語の有気音と無気音の識別にも応用される。中国語の有気音と無気音の識別も、話者が遠くに離れていたりして子音が聞こえなければ、母音の発音直後の聞こえ方で識別するしかない。
また日本語の清音について、濁音ジに対する清音(ここでは有気音と無気音の対比上シではなくチを挙げる)について言えば、まず歯茎破擦音が発声された後、時間を置いて母音が発声される。この時子音を強めに発音すれば中国語の有気音qiになる。日本語のチは中国語のqiにとても近く、日本語でチーと発音すれば中国語のqi以外の音声に誤解されることは無い。対比して濁音ジの発声方法は、母音の発声タイミングが子音とほぼ同時になる以外はチと変わりが無い。これは有気音と無気音の決定的な区別の違い以外の何物でもない。日本語のチを発音する時に、吐く息をどんなに弱めても絶対に中国語のjiにはならない。もしも日本語のチを弱く発音して中国語のjiと認識されたならば、それは母音さえも弱く発音された結果、ジ(中国語ではji)と区別が無くなってしまったことになる。だから南京(nanjing:ナンジン)をナンチンと発音せよという教育法は完全に間違っていると決定付けられる。
ここで結論するが、有気音と無気音の発声法の決定的な違いは、子音の発音の強弱ではなく母音の発声方法であり、日本語の清音/濁音の母音と中国語の有気音/無気音の母音の発声法は等しい。よって日本語の清音で中国語の無気音を発声したら、母音が不適切に発声されることになるため正確な中国語にならないことになる。これはつまり南京を日本語の清音でナンチンと発音したら誤りということになる。

私がWEBサイトを検索した結果、中国語の有気音/無気音は日本語の清音/濁音で発音すべきだというサイトの方が、濁音による発音を許さないと言う不正教育サイトよりも多く発見された。以下に代表的なサイトのリンクとその記述を付記する。

http://www.go-chinese.com/pronounce.html より

・日本人の中国語初心者はboを小さな声で、poを大きな声で発音しがちですが、中国人は全く同じ音量で発音します。boを無気音、poを有気音と呼びますが、これは決して「無気力な発音」「気合のこもった発音」という意味ではありません。
・boとpoの違いは、「息の強さ」の違いではありません。「息を出すタイミング」の違いです。
 boとpoの区別ができない初心者は、とりあえず、日本語や英語ふうにそれぞれボー(濁音)、ポー(半濁音)と発音してゴマカしても、中国人は理解してくれます。ただし、中国人が耳できくとすぐに外国人の訛りであることがわかってしまいます。


http://www.1karachinese.com/2006/02/post_5.html より

日本のアカデミックな学習環境はなんとなくこれに似ています。有気音・無気音の区別ってそんなに大切ですか?
 わたしは敢えてこういう方法を提唱したいと思います。
 ○ 有気音は、ぱぴぷぺぽ、みたいな清音。
 ○ 無気音は、バビブベボ、みたいな濁音。
 これが全てです。
b/d/g/zの音はすべて日本語で言う濁音と考えましょう。唇をどのように閉じて息を抜くか、なんて理論はもう忘れましょう。濁音です、濁音。ガギグゲゴ、と同じです。
 それで発音して困ることはあるのでしょうか?答えは、全く無い、です。

私の超高速中国語学習法(5) 発音をマスターした者の視点から(1)

こうして、マルチメディア学習ソフトで発音を習得し、中国語学習の基礎固めを完成させた私であるが、今日は私の視点から世の中に溢れているいい加減な中国語発音教育について述べさせていただきたい。
私がまず言いたいのは、中国語の有気音、無気音の聞き取り程度すらできないくせに中国語の発音について偉そうな知識を振りまく日本人が世の中には多すぎるということだ。
この様な無能な教育者・学習者は、有気音と無気音の違いをよくこの様にして説明する。
「po(ポー)という発音は、口の前に幅2cm、長さ10cm位の紙切れを垂らし、これがなびく様強く息を吐く。だが、bo(ボー)の発音では紙がなびいてはならない。」
これは、視覚的なやり方なので実にポピュラーな練習方法として知られているが、まずこの方法を絶対的に正しいとして覚えたら間違いだ。更に私は次の様な誤った教え方も横行していることをインターネットの掲示板(内容は、初学者と教育者のやり取り)で知った。
これは、前述の紙垂らし法に加え、息を強く吐けば何でも有気音になるという論法だ。つまり、有気音qi(チー)の発音であれば、日本語に似た発音でチに力を込めて発音するが、qiに対する無気音ji(ジー)は、チに力を込めずに日本語に似たチーを発音するのが正しい。従ってjiに振り仮名を付けるならばジーとはならず、チーとなるという教え方だ。
全く甚だしい勘違いである。
もしも吐く息の強さで有気音、無気音の区別がされてしまうのであれば、相手の耳元でヒソヒソ話しをするのと、遠くにいる人に向かって大声で叫ぶのとでは言葉の意味が違ってしまうことになる。世界には把握できないほど多くの言語があるといえども、声の大きさで意味が違ってしまう言語などある訳が無い。そんなものは言語として成り立たないはずだ。中国語は5,000年の長きに渡り使用されている世界で最も歴史の古い言語のうちの一つなのだから、そんな実用性の無い言語ではない。
通常、音声を話者から遠く離れた場所や、電話及び電波の弱いラジオ放送などで高周波のカットされた音質の悪い状態で聞くと、日本語のサ行で発生する摩擦音や、ポなどで発生する破裂音の様な周波数の高い音声成分が聞こえにくくなるのだが、我々は多少の聞き取りにくさは感じるものの大抵は聞いて意味を理解できる。これは、わずかに聞こえる高周波の発声開始から声帯が振動して母音が聞こえるまでの時間の長さで高周波の強さが判断でき、また母音が急激に発声されるか、緩やかに発声されるかで母音の前の子音を推測できたりするからである。
中国語の有気音では、子音の発声開始から母音の発声開始までの時間が長く、無気音では短いというほかに、有気音では母音が急激に発声されるが無気音では穏やかに発声されることで聞き手はこれらを区別できるのである。
よって中国語の有気音、無気音が遠く離れた相手にも通じたり、電話の音声でも判断がつくのは声の大きさや息を吐く強さによる発声方法の違いではなく、子音の発声開始から母音発声までの時間のずれや母音の発声が急激かどうかの違いであるということである。
これで紙垂らし法について話を戻すと、有気音を小声で話す時は紙はなびかないし、無気音でも大声を出す時は紙がなびく程の強い息が吐かれなければならないのだから、単に吐く息の強さだけが有気音、無気音の発声方法の違いだと論ずることは誤っている。
だから、「jiはチーを息を弱くして発声する」という様な、読みの表記に濁点を使うことを許さない教育を正しいと信じた学習者は、再見(zai jian:ザイ ジエン)を発音しても日本語でツァイ チェンと聞こえてしまう。そして、有気音のcaiを発音させると、口から唾液が吐き出されるほど強く息を吐いた日本語のツァイを発音する。こういう学習者は、普通の息の吐き方でツァイと発音すれば無気音のzaiになるのだと信じ切っているのだ。数年前、NHK教育テレビの中国語講座で、タレントのはなという女性が初心学習者としてレギュラー出演していたが、彼女もzaiをツァイと発音せよという教育法を受けていた様であった。だからとてもヘタに聞こえたし、案の定、書店で売られているNHKテレビ中国語講座のテキストで「はなさんの無気音は気が強すぎます」という視聴者からのクレームが掲載される始末だった。結局はなさんのヘタクソな発音は最後まで治らなかった。
ここで、ついでにNHKテレビの中国語講座について述べさせてもらえば、平成17年の12月頃観た講座では、はな女史よりも数倍発音のヘタな日本人男性が登場して中国人と寸劇をしていた。子音発声の基礎学習もなされていないようであり、声調はデタラメ、自分の発音に自信が持てないらしく、声も小さくてハッキリ聞こえない。私はそれを観てテレビを消した。以来中国語講座は視聴していない。あれでは語学講座の意味が無い。こんなヘタな発音でも通じますよと言っているようだ。NHKの語学講座もだいぶ信頼性が落ちたものだ。
続く