日本メーカーお得意の過剰な品質管理

読者の皆様、こんばんは。
久し振りに投稿します。
今日の投稿は、数日前NHKテレビのニュースで紹介されていた日本のどこかの制御盤メーカーの改善活動についてである。
改善活動とは、製造業の作業員が製造ラインでのコストダウン、作業環境の改善等について上司に提案し、良い提案と承認されれば現金の給付や表彰を受けるという品質管理活動の一環である。
改善活動は、日本の製造業で製造物の品質が世界的に優秀な理由の一つとして広く知られているが、果たしてそうだろうか。
私の以前の投稿で、石田梅岩という人物が日本の製造業に初めて高付加価値追求思想を取り入れたという記述をしたが、1980年代に製造業の品質管理が広く普及した頃、既に過剰な品質管理という問題が発生していた。
日本の製造業者が過剰な品質管理を施した製品を高価で販売するのを見て、韓国や中国などの(この頃の)発展途上国が、サービスや品質を犠牲にして、ある程度の基本的性能を満足した製品を安価で製造販売し始めたのだ。それ以前のこれら外国産品が「安かろう悪かろう」であったのが「安くても悪くない」という商品として認められたのだ。
私がテレビで見た「制御盤メーカーの改善活動」は、日本では未だに過剰な品質管理が続けられているという実態の証明だった。
このメーカーでは、製品内部の配線の結束にインシュロック・タイという樹脂製の結束線を使用しており、この代わりにほかの製造ラインで発生した熱収縮チューブの廃棄物を再利用して加熱するという「改善」を実施したところ、インシュロック・タイの年間の購入費14万円が浮いたというのがテレビで紹介された改善だった。
私は、これを見て、この改善は全くコストダウン効果が無いと推測した。その理由は以下の通りだ。
(1)熱収縮チューブが廃材として発生するという製造工程の無駄が改善ポイントであり、視点がズレている。
(2)熱収縮チューブを加熱するための業務用ヒーター(ヘアドライヤーを大型にしたようなもの)の購入費、メインテナンス費用、電気代(1台で1500W程度は消費するので、何台も使うと電気代は高価になる)が経費となる。更にヒーターの置き場所が必要になり、使用頻度の高い工具や材料の置き場を圧迫する。
(3)熱収縮チューブを加熱するための作業時間はインシュロック・タイを結束する以上に長い。また配線が冷めるまで次の作業ができない、加熱の仕方の標準化が徹底されないと不良品の発生に繋がる、などの作業の無駄が発生する。
これらの材料費、労務費、光熱費、用品費の発生を総計したら年間14万円を軽くオーバーするだろう。
また、製造業が認証取得しているISO9001なども、形骸的なものに過ぎず、企業の財務的にはマイナスとなっていないだろうか。これも過剰な品質管理と言えるだろう。
従業員は上司の命令に従って無意味な管理書類を作らされ、定期審査は認証機関に高額な維持管理費用を払うだけで形式的にパスしているだけ。認証機関だけが利益を得るためのシステムになっているのが現状と言えないか。