ニセ予言者は、自己中心的でヒステリックだ。(2)

 人間の行動は、情報のキャッチ→情報の集積・整理→判断の順で行われる。
いずれに誤りがあっても的確な行動には至らない。行動してから変更することが不可能なこともある。当然ながら多くの人を動かす場合の状況判断にはとりわけ慎重、正確な行動が求められる。
 情報のキャッチ段階で大きなミスをしたら、それだけで許されない失敗となることが多いが、判断の段階での大きなミスとなる例として良く挙げられるものがある。それは、部分的・表面的な情報だけを観てそれが全体であると決めつけること。それによって本質が分からないまま行き当たりばったりの対策に走ってしまうことだ。
 今回の3.11大震災による原発事故の影響で、原発に反対する風潮がにわかに盛り上がっている。それまで原発反対運動など、左翼団体や過激な環境保護団体の一貫した主張でしかなかったものだが、今では多くの人が原発推進という言葉を口にするのに抵抗を感じるようになっている。
 福島原発放射能が拡散されて各地に広がったり、農産物の汚染が確認されたのだから、これを非常に深刻な事態だと受け取るのは理解できる。だが、もしも今回の震災で原発に被害が無く、ある地方の火力発電所が被害を受け、重油が海に流出したとか、燃料に着火して大火災が発生し、途方もない量の温室効果ガスが排出されたとしたら、世界中で火力発電所の運転、建設をすぐに止め、安全な原発の稼働を推進しようというムーブメントが沸き起こっていたに違いない。
 原子力発電については、私も100%安全な発電方法だとは思っていない。しかし、科学技術の発達とは失敗や事故を教訓にして次の世代の技術に進化してきたものである。日本でも昭和30年代は、自動車産業の発展段階で交通戦争と呼ばれるほど災害や失敗があった。だが科学技術の発展でそれらは乗り越えられ、現在の安全で信頼された車社会がある。交通戦争と呼ばれた時代に、民意で自動車産業を衰退させたら現在どうなっていたかは想像するまでもない。
 自然エネルギーによる発電は、現段階では取り出せるエネルギーが非常に少ないため、更なる研究が続けられているが、いずれ技術の発展で火力発電所に匹敵する位の性能のものが実現されるのかも知れない。今の技術での原子力発電は、核燃料の発熱で水を温め、タービンを回すという原理だが、将来は放射線そのものを直接電気エネルギーに変換するという高効率な発電技術に変わっていくだろう。そうなるまでの現行技術の原発は、安全に稼働させていかなくてはならない。
 原発反対者は、火力発電は温室効果ガスを発生し環境に悪影響を与えるという本質は理解しているようだ。ところが自然エネルギーによる発電が火力・原子力発電と完全に置換が可能だと勘違いしている。何と甚だしい科学知識の無さであろうか。
 一部の環境保護団体は、ハイブリッド車に乗り換えることが温室効果ガスの削減に繋がると説いている。これは明らかに間違いである。ハイブリッドの新車を新しく製造し、それまで乗っていた車を廃棄する課程で、中古車に乗り続けるよりも多くの温室効果ガスが排出されるのである。これも物事の本質を知らないことの露呈だ。
 こう考えると、福島原発の災害が起きただけで世界に反原発ブームというのは、「本質が分からないまま行き当たりばったりの対策に走る」行動そのものでしかないのではないか?
 ネットで活動するニセ預言者も、すべてが原発反対派だ。本当の預言者ならば、正しい科学技術の知識程度は身につけて発言して欲しい。また、本当に未来が分かるのならば、最も安全で現実的なエネルギーの製造方法を知っているのだろうな。過去も現在も未来も、原発を推進する人間は魔界に墜ちると言っているが、現世の人間にはこれが最適の発電方法なのだから、すぐに代替案を預言で示せ。世界が注目する緊急事態なのだぞ。できないのならば、私はそれらをニセ預言者と呼ぶ。