私の超高速中国語学習法(11) 北京放送中国語講座の衝撃

私が中国語の独学を開始してから約半年を過ぎて、たまたま家に短波ラジオがあったため、中国現地からの放送、つまり生の声を聴いてみた。受信可能な電波帯をくまなくロールしていくと、感度が悪いものも含めて15局以上の放送局があるように思えた。特に北京放送(中国国際放送局)、中央人民広播電台、寰球広播電台(局名はいずれも当初は不明だったが、私がその後聞き取り能力を磨いたことから判明した。)の3局は電波が強く、特に北京放送の場合は中国国内のラジオ局で唯一日本語による放送をしているので、中国国内のニュースや流行の音楽、現地の生活情報などの珍しい番組が流され、今でもたまにではあるが興味深く聞き続けている。
また、北京放送では日本人向けの中国語講座が初級、中級(ビジネス)に分けて放送されていることも知ったが、初級中国語講座を数週間聞いた後、カリキュラムが第1回目の発音入門に戻った。これを聞いた時は激しい衝撃を受けた。
北京放送の中国語講座(初級)は、中国人が編成した学習プログラムを使用して日本人だけを対象に中国語の基礎を教授するものなのであるが、さすがに中国語と日本語を熟知した中国人が組んだプログラムとあって、その内容は極めて洗練され、私がそれまでに観て来た如何なる和製中国語学習プログラムよりも優れていた。
最初の最初に、漢字の読み方が日本と中国では異なるという困難を乗り越えることが学習の第一歩だと教えてくれた。これは偶然にも、私の考案・実施して来た中国語学習法と一致した。
次に、漢字の中国語読みと日本語読み(音読み)は意外に多くの共通点があるのだから、我々中国人と日本人がお互いの言語を学習し合うには非常に好都合だということである。そこで例を取り、次の様な漢字の読み方の「法則」を教えてくれた。
・漢字の中国語の読み(ピンイン)音読みで、「n」で終わるものは日本語の音読みでも「ン」でも終わる。
・漢字の中国語の読み(ピンイン)音読みで、「ng」で終わるものは日本語の音読みで「ン」にならない。
 例を挙げると、漢字「動」はピンインでdongのところ音読みでは「ドウ」となって「ン」で終わらないという様である。但しごく一部の例外がある。
国語学習者にとっては、こんなこと位は十二分に承知だろうかと思うが、それまで独学で中国語を学習してきた私はこんなことも気付かなかったのだ。それまではただ闇雲になって漢字の読み(ピンイン)を暗記していたのだが、この「法則」を知ったことがトリガーとなって漢字の読みの記憶学習は飛躍的に進んだ。思えば、今まで目にした中国語学習用のどの教本にも、こんな便利な漢字の読みの記憶法は掲載されていなかった。これが分かった時の感激は大変なもので、同時に、今までやっていた学習法の効率の悪さを感じ、学習プロセスの選定を誤ったことを深く後悔した。
その後の展開は、ピンインの綴りと発音についての学習者側の自主的な予習を必要とするが、新出漢字については声調を重点に教えてくれるし、その漢字を使った熟語や例文が最低2回繰り返され、記憶・定着効果を高めている。日本人による中国語講座では、例文の文法にもやや信用できかねることがあるが、北京放送の中国語講座は中国人が製作したものなのだから100%信用できる。また、単語や例文には中国語で良く使われ、生活会話に役立つものが多用されているのも特徴的だ。
NHKで放送しているラジオの中国語講座も良いのだが、放送時間が平日の朝8:30〜という時間帯では、普通のサラリーマンは聞くことができないだろうし、テキストも購読しなければならない。だが、テレビの中国語講座は以前にも述べたように、数年前の放送内容と比較してひどく質が落ちている。初心者が視聴すると、発音を誤って覚えてしまい、逆に視聴しないほうがマシという程度の危険なものになっている。
平成15年頃にNHKは語学講座を全面的にリニューアルしたことを強くアピールしていたが、この時に私は危険の芽を感じていた。何がリニューアルされたかと言うと、レギュラー出演する素人学習者がすべて若い女の子であるということであった。それを宣伝するために、英語、スペイン語、中国語、フランス語、ハングル等各言語の講座に出演の決まった女の子を、NHKが製作のバラエティークイズ番組に出場させて点数を競わせるということをやっていた。その予告編が放送されたのを偶然観たのだが、よくもまあこんなカワイイ女の子を集めたものだと感心するほど、彼女らは容姿の良さで選ばれていた。その後本番の語学講座では、女の子の見た目の良さを中心にした映像構成が採られ、肝心の語学教育の路線がおろそかにされ、逸脱し始めていたことを認識できた。
反面、北京放送の中国語講座は毎週日曜日に放送があり、テキストという程の物ではないが放送に合わせた解説がインターネットのWEBサイトに公開されており、書店に出向く必要が無い。
だから皆さんには特別にお勧めするが、中国語を学ぼうと思ったらまず先に短波ラジオを手に入れ、北京放送の中国語講座を聞きなさい。発音を学ぶよりも先に漢字の読みについての学習をするという最高の入門学習法があることを知って欲しい。知らずに学習を進めると後悔は避けられない。