私の超高速中国語学習法(4) 完璧な発音の追求

入門書をまず1冊買ったその翌週、今度は発音学習用のマルチメディア教材を購入した。
当時私の所有するコンピューターはPower Macの新型1台だけだったため、Macで動作可能なソフトを探していたところ、株式会社創育の「中国語快速完成」シリーズくらいしか動作可能なものが無かったため、このシリーズで最も易しい「(1)ラクラク!入門編」を購入した。
このソフトは、付属の教科書も多色刷りで読み易く編集されているし、独習で完全な発音を習得することのできる優れた製品であると今も高く評価している。
また、このソフトを買って良かったと思うことは、漢字の日本語読み用の振り仮名で濁音を採用していたことであった。これは製品を開梱するまでは分からなかったが、濁音採用の教育法であったと分かったときは胸を撫で下ろした。
私が書店で多くの入門書の中から1冊を選び出した時、中国語の漢字の読みを日本語で表記する時には2つの流派があり、どちらが正統なのかという客観的な見解は無いということに気付いていた。
1つは、ピンインでzaiと表記する「再」などの漢字の読みをツァイと清音で表記する方法。
もうひとつはザイと濁音で表記する方法。
これについてどちらを採用すべきかは、下記の理由により濁音表記による記述法が適当と判断した。
(1) 濁音を認めない表記では、ザイ(zai)と読む再(などの漢字)もツァイ(cai)と読む菜(などの漢字)も一緒くたにツァイと表記されてしまい、区別して発音しなければならない無気音と有気音が同じ発音で良いという考えで記憶されてしまう危険性が高い。
(2) 元来、日本語(大和言葉)に濁音・半濁音は無く、中国等からの外来語の音読、表記を適切に行うために濁音・半濁音が使用されたのであり、中国語の有気音と無気音の読みによる区別に清音と濁音を使用して何が悪いのか理解できない。
(3) 昭和30〜40年代から刊行されている、いわゆる実績のある入門書では100%が濁音を認めない表記となっており、一方、濁音を認める表記はそれ以降最近になって増えていた。学習法にも時代の流れに合わせた流行というものがあるのだから、この流行に乗るべきと判断した。
これで、私は毎晩自宅でこのソフトを使い、発音の特訓を続けた。このソフトでは、小単元毎にテストがあり、高得点を上げないと次に進めないという構成になっている。問題も毎回ランダムに出題され、正答番号を覚えてイカサマをするということができなくなっている。このためテストに合格するためにシャカリキになって発音を覚えていかなければならない。
発音レッスンは母音から始めて子音、nとngの発音、多重母音の順で進められるが、私は子音レッスンの単元で相当に嫌気がさして来た。中国語の子音は日本語とは大きく違い、その数がとても多いので、新しい子音を覚えると前に覚えた物を忘れたり、つづりの似たピンインの漢字(例:ji,zhi,zi)を混同して覚えたりで、パソコンの画面で口の動きを撮影した動画と漢字のピンインを見て発音を聞き、これを自分で発声するという単調な学習の繰り返しに飽き、学習効果があまり上がらないのに焦っていたのだ。しかし、これでも約3週間後にはやっと子音の単元を修了できた。思えばこの子音が最も難しく、苦労した単元であった。その後の単元は割と苦労せずに進められ、発音レッスンの最後には更に念を入れ、すべての単元で100点が取れるようになるまで徹底的なリピート学習を行った。これで、パソコンを使用した学習を始めて約2ヶ月後に、ピンイン(または、簡単な漢字)を読んで即座に正確な発音ができる様になった。この時から約半年後に、私は地元の市で開催している週1回の中国語講座に初心者として参加するようになったのだが、独学で中国語を学んでいる人でこんなに発音が正確な人は今まで見たことが無いと、講師の中国人学生に褒められるほどであった。私の学習システムでは、完璧な発音をマスターすることを学習開始直後の到達点と決めていたので、学習方法のシステム設計についてはまずまずの成果を上げたことを実感できた。
続く