我的拍売戦記(5) ブルース・リーDVD5部作その十一

その6「ブルース・リー座頭市

ブルース・リーの主演映画5作品すべてが「警察オチ」と言っても良い程の共通のエンディングによるものだったというのは衝撃的であった。最近分かったのだが、リーの活躍を偲ぶ映画というものが何本もその後に製作され、どれもお笑い映画になっているのだ。「ドラゴン危機一発’97」、「新・ドラゴン危機一発」、「燃えよピンポン」などである。機会があれば鑑賞してみたいものだ。
さて、今日はブルース・リーの主演映画5作品の鑑賞に続く6作目の番外編として、これも私がオークションで落札した「ブルース・リー座頭市」(原題:李三脚威震地獄門。日本未公開のため邦題なし。ネーミングは私が考えた。)について述べる。

この映画は、20世紀中に日本のある映画雑誌が「史上最高のバカ映画大賞」というコンテストを勝手に作り、そこで最優秀賞作品として取り上げたことで有名になったという伝説がある。
日本では未公開という作品なので、インターネットが普及する前はVHSビデオテープに録画したものが高値で取引されていたらしいが、現在はオークション等で容易に入手できる。
私はお笑い映画が大好きなので、真剣な武術格闘映画にもお笑いを求めてしまうが、インターネットではこの映画のことをムチャクチャだとか、手抜きまくりだとか悪評だらけだということが好奇心を加速させた。
作品は、ブルース・リーに外見がソックリな武術家、李真煩が、双節棍(中国武術のことを良く知らない日本人は、これをヌンチャクと呼ぶらしい)を携えて、なぜか閻魔大王が門番をする地獄に堕ちた。
李真煩とは、ブルース・リーの本名、李振藩が中国語でli zhen fanと発音するのをもじって、同じ読みをする李真煩を当てたもの。真煩とは、煩わしい、嫌だ、迷惑だという形容詞「煩」を副詞「真」で修飾して「全く煩わしい」という意味。
李真煩は、地獄街でポパイなどの善玉キャラを従えて夕日のガンマン、ゴッドファーザーのボス、座頭市などの悪役と戦い、悪役のギャング集団を倒した後は街の住民に惜しまれ、天国へ昇天するハッピー・エンドという奇想天外なストーリーである。
ただ、私はこの作品を鑑賞して、これがムチャを通り越して思いっ切りアホな映画と形容されるものではなく、一流の武術格闘映画であると高い評価を下したい。作品の始めは、俳優の演武がぎこち無いが、ストーリーが展開するに従い武術格闘に磨きが掛かって来るのがハッキリ分かる。途中、李真煩が座頭市と戦う場面があるが、日本のお笑い番組座頭市のものまね専門で出演した素人の日本人が、中国のアクションスター顔負けの演技で、得意の居合斬りを活かして闘っている。このシーンが割合と長く、人によっては退屈だと形容するが、私にとっては充分に味わいのある名シーンと評価したい。この格闘シーンの出来の良さが際立っているので、私はこの映画を「ブルース・リー座頭市」と呼んでいるのだ。
そのほかの格闘シーンにも高度な技術が光るシーンが数多く、李真煩が多くの敵との格闘を繰り返しながらストーリーはエンディングに向かっていく。最後に李真煩が昇天するシーンでは、人形が3分位のワイヤーで吊られて上っていく。これは大声で笑えた。

連載、「ブルース・リーのDVD5部作」は、これで終わりだ。