我的拍売戦記(5) ブルース・リーDVD5部作その十

ブルース・リー死亡遊戯」の続き

運良く無事にガラスを体当たりで破って屋上に出たリー。大ボスを追走するが、大ボスは一足先に屋上から下屋に降り、リーの追撃をかわしたかの様に見えた。しかし、年寄りで運動神経も弱っている大ボスは、下屋に上ったとたん、足を滑らせて転落死してしまう。ネオン電飾に当たり、美しい火花を散らしながら大ボスに見立てた人形が転落し、最後は道路に叩き付けられた大ボスの死体が映し出される。すると、今まで演奏されていた神聖なる名曲「死亡遊戯のテーマ」が鳴り止んで突然けたたましいバンド演奏に切り替わり、安っぽい電子楽器を使ったような「ピュイン・ピュイーーーーーン!ピュイン・ピュイーーーーーーーーン!」という合成音がバンド演奏に合わせて大音量で鳴り響き、廣東語(私はこれが中国語か廣東語のどちらかであると聞き取ることができたが、中国語には無いho[日本語と同じ発声法で、ホーと発音する]という発音が多用されていたため、廣東語と判断した。中国語ならば歌詞は分かるが、廣東語では全く理解できない。)で男性ボーカルが入る。
ここからの映像は、音楽が切り替わると同時に、これも突然現れた警察が、手際良く偽ブルース・リーを逮捕しパトカーに押し込め、目にも留まらぬ速さで現場を引き上げて消え去った。

ここで

私の怒りは、

臨界に達した!!

廣東語で歌っている歌手の歌い方、バック演奏の仕方が実にヘタクソで、鑑賞者をバカにしている以外には考えられない!その上、この作品も警察が最後に現れて殺人事件を解決するという、ブルース・リー主演映画共通のお決まりパターン!!
第1作目の鑑賞から始めて、各々の作品を観終わる毎に溜まり続けたストレスをどうにかして処理しなければ気が狂ってしまいそうになっていた。
そして、この作品の最後は、出港する船の映像と一緒にサングラスをかけたブルース・リーのスチル画像が映し出される。最後の画面に映し出されたリーの写真は、まるで「たけしの挑戦状」のエンディングで映し出されたたけしの顔そのものの様に、これも鑑賞者を愚弄したように「しかし、よくもまあ/こんなくだらない映画に/最後まで/付き合ってくれたよな/褒めてやるよ/ホアチャーーアオ!」と喋っている様にしか見えなかった。
エンディング画面のブルース・リーの顔がたけしの顔に見えた。
私が記憶していた「たけしの挑戦状」のエンディング画面のたけしの顔がリーの顔とオーバーラップした。

私の怒りの核爆弾は、遂に爆発した!

そうだ。今の私がすべきことは、当時の少年達の多くはクソゲーたけしの挑戦状」に怒りをぶつけ、ROMカセットを粉々に壊したという伝説を今度は私がこの場で実行することだけでしかないと考えた。
まず、DVDプレイヤーのEJECTボタンを押してDVDを取り出した。次に、出て来たDVDを二つ折りにして割ろうとした。しかし、このDVDは折り曲げてもグニャ!と曲がるだけで割れてはくれなかった。私は、立ち上がり、地団太を踏んでDVDを20回、30回と折り曲げて遂に引き裂くことに成功した。次に、2枚に分離したDVDを重ねてこれも数十回折り曲げて4枚にした。次にこのうちの1枚を奥歯で思いっ切り噛みながら、残りの3枚も半分にした。同時に、
「何でこんなことになったんだ!」
「そうだ。燃えよドラゴン→ドラゴン危機一髪→ドラゴンへの道→ドラゴン怒りの鉄拳→燃えよドラゴンブルース・リー死亡遊戯、この鑑賞の順番がいけなかったのだ!想えばこれ以上は無い最悪の順番だ!」
「いや、ブルース・リーの主演作品をこの順番で鑑賞した人は必ずこの様に怒りが爆発するに決まっているんだ!」
「だから、私の暴れ方は正当なんだ!!」と心の中で叫びまくった。
次に、細切れにしたDVDを掴んで、DVDプレーヤーに向けて叩き付けた。
次に、「ブルース・リー死亡遊戯」のDVDの化粧ケースを、素手で引き裂き、これも1/8の大きさになるまで食いちぎり、テレビに向けて叩き付けた。
後は、1週間これを片付けず、この時の怒りの状況をを記念に残した。
これが、私の映画鑑賞の趣味における空前絶後のバイオレンスの一部始終だ。

続く