我的拍売戦記(5) ブルース・リーDVD5部作その五

その4 燃えよドラゴン(龍争虎闘)

私は、この映画と「ランボー2 怒りの脱出」は過去15年位、1年に1度以上は鑑賞することにしている。15年前といえば、私が中国語学習者でもなくブルース・リーについて特に興味を持っていた訳でもないが、たまたまテレビ放送の録画テープを鑑賞するうちにこの2作品の強烈なエンターテインメント性に愛着を持ち、それでいて何度鑑賞しても飽きる事がなく次々に新たな発見をする愉しみがあるために鑑賞を続けているのだ。
なお、「ランボー2 怒りの脱出」については別の機会で長編のコメントを予定している。
燃えよドラゴン」の中国語の原題、「龍争虎闘」とは、「どちらも優劣付け難い2人の強者による、凄まじい戦い」という意味であり、中国人ならば小学生でも知っている四字熟語のひとつである。日本人が書いたWEBサイトで「龍虎闘争」とか「龍虎争闘」などと表記されているのはすべて間違い。この作品の完成度の高さから言って、これ以上的確な表現は考えられないと言える程の世界最高のネーミングである。もしもブルース・リー主演初作品の「ドラゴン危機一発」の原題が「龍争虎闘」だったら明らかに名前負けであるし、「燃えよドラゴン」にも的確なタイトルが付かず、香港でのヒットも無かったのではないかと考えられる。
既に日記に書いた通り、私は「燃えよドラゴン」を観た後でブルース・リーのその他の主演作品を観ているのであるが、「燃えよドラゴン」の製作費はほかの作品より50倍は多いのではないかと感じる。
まず映画のタイトル音楽。この音楽の作成にも、ほかの作品に比べて多額の製作費を掛けていると感じる。数日前にアラベスクのCDを紹介したが、オークションの出品物を検索したら、アラベスクの曲が収録された’70ディスコ・ベスト・ヒットというオムニバスCDに「燃えよドラゴンのテーマ」が収録されていた。一体これがディスコ音楽なのか大いに疑問を抱いた。’70年代はディスコでこれがかかると、踊っている客がすべて一斉に「オアチャーーーーオ!!」と奇声を発しながら武術の練習の如きポーズを取ったり、跳び蹴りをしたのだろうか。私は、このタイトル曲がディスコ音楽に分類されているのを見て失望した。この曲はディスコでかかるような格調の低い曲ではないのではないかと。
最初に主人公李(リー)の妹が悪党に絡まれ逃げ回るシーンがある。全く目が離せぬ面白さだ。この中で、妹が民家の窓を叩いて住民に助けを求めるが、中にいた婆さんが、冷たい目をして窓をバタン!と閉めてしまう。
この婆さんの表情が笑える!これが、この作品でまず大笑いできるシーンだ。
次に、ボス敵の韓(ハン)の招待する武術大会に参加する輩のエピソードシーンが出て来る。米国人ウィリアムズは、職務質問の警察官を武術で倒し、何とパトカーを盗んで逃げてしまう。私は初めてこの作品を観た時、パトカーを盗むという展開が全くの想定外で、大声を上げて爆笑した。だから、このシーンを見るたびに大爆笑した時のことを思い出し、笑いに浸る事ができる。これが2度目のお笑いだ。
ハンの住む島で武術大会が進むと、リーと妹の仇であるオハラとの対戦になるが、リーはいわゆる「ドラゴン蹴り」をジャストミートさせてオハラに決定的なダメージを与える。ここで、1秒も掛からないはずのドラゴン蹴りを5秒位引き伸ばしたスローモーション映像が使われている。だが、なぜかリーお得意の奇声までもが引き伸ばされているのだ。リアルタイムで再生すれば「アチャーオ」になるものを数秒間引き伸ばした結果、

「ホアァァァァーーーーーーーーーアアチャハアァァァァーーーーーーーーーオーーーーーーーー!」

となっているのだ。これもお笑いだ。
明らかにアフレコと分かる、わざとらしい音声がこの作品の緊張感をぶっ壊している。次に、ドラゴン蹴りを食らったオハラが後ろにいた10人位の若手に向かって飛んで行き、若手がクッションとなってオハラをかばうのだが、ドラゴン蹴りを受けてオハラが骨折したのではなく、受け止めた若手が骨折したというエピソードがこの映画にはある。

続く