我的拍売戦記(5) ブルース・リーDVD5部作その一

今回からは、インターネットオークションで落札したブルース・リーのDVD5部作についての記録だ。
中国語上級者の私は、中国語(廣東語はダメ)で字幕さえ用意されていれば日本語字幕は無くても理解できるので、日本製のDVDはわざと選ばず、中国製のDVD(もちろん正規版で、信頼できる出品者から)を落札した。
ブルース・リーの5部作とは、 (日本名と中国語名で表記)
ドラゴン危機一発(唐山大兄)」
「ドラゴンへの道(猛龍過江)」
「ドラゴン怒りの鉄拳(精武門)」
燃えよドラゴン(龍争虎闘)」
ブルース・リー死亡遊戯死亡遊戯)」
である。
まず、私は中国へ何度も旅行しているが、信じられないだろうが中国ではブルース・リーの映画作品をビデオやDVDなどで買おうとしても、どこにも売られていない。中国人は新しい物好きで、時代遅れの物を買うのは恥ずかしいと見られるようだ。だからこの5部作をすべて中国語版で入手できたことを喜び、今後も大切に保存する。と決意したのであったが、上記の作品を上から順に鑑賞する途中、そのようにできない事態が発生し、私の数少ない映画コレクションという趣味において空前絶後のバイオレンスが巻き起こる。読者の皆さんには、この5部作のエピソードは最後まで読んでいただきたい。そしてこのエピソードはブルース・リーの第6作(?)へと続いていく。

その1 ドラゴン危機一発(唐山大兄)
ドラゴン危機一発とは、読んだだけで腹を抱えて大笑いできるタイトルの付け方である。明らかに「危機一髪」のマチガイで、日本で公開された時の宣伝ポスターにも、クソ真面目な書体で「ドラゴン危機一発」と表記されている。このネーミングを考えた(マチガイに気付かなかった)のは水野晴郎だという。本人が直接テレビに登場して喋ったのだから間違いないのだろう。しかしこの映画、どこが危機「一発」なのか??ブルース・リーが危機に直面する場面など100発近くもあるのに危機が「一発」しか無いかのような想像をさせるネーミングだ。全く以ってデタラメな馬鹿馬鹿しいネーミングだ。
さてこの映画、ブルース・リーがハリウッドでの俳優稼業が嫌になり、「なにがハリウッドだ。あんな映画なら俺が自作自演した方がずっとうまくできる!」と奮起して故郷の中国に戻り、中国を舞台に、編集・プロデュースを香港で行った初めての作品だ。
 舞台はタイ国境付近の中国。仕事を探しに、いとこの家にやって来たジェン(中国語では鄭と書いてzhengと読むのでチェンではありません。)は、村の若者が働く製氷工場にお世話になる。ある日、工場が麻薬の発送施設であることを知ってしまった同僚の若者が工場長に殺される。謎を追うジェンは命懸けの復讐によって殺人事件を解決するというストーリーの青春映画だ。どこと無く日本の青春熱血風テレビドラマに似たタッチで進行し、森田健作がどこかから登場しそうな雰囲気がある。
最後は、工場長と共謀犯の息子、麻薬工場のチンピラ軍団をすべて抹殺したジェンが警察に逮捕され、ジェンを恋したヒロインが悲しそうに見送るというものだ。
私は、ブルース・リーの映画を観たのは「燃えよドラゴン」、「死亡遊戯」に続いてこれが3作目で、初めて観た「燃えよドラゴン」が終始強烈なエンターテインメント性を発揮させるよう作成されたのに比べると、桁違いに貧乏臭い映画に見えたし、何度も鑑賞に堪え得る作品とは言えないという感想だ。