第8集 超空の要塞・B29

第8集 超空の要塞・B29 レア度:A(激レア)

最終巻の第8集である。
このシリーズは私が小学生の頃に書店で買うことができたが、1冊の単価が500円した。500円あればちょっと高級なプラモデルを買うことができたので、あまり本は買わなかったという記憶がある。ただこの第8集だけは、悲惨な内容で面白くなさそうなのでたとえ金があっても買わなかっただろう。これはほかの子供達も同じ考えであったに違いない。この様な理由で第8巻は相当に販売冊数が少なく、現在は新書でも購入できるが、古本として入手するのはかなり難しいと考えられる。
秋田書店の宣伝では、このシリーズは「すべて読めば、太平洋戦争のすべてがわかる!!」という触れ込みで、各巻にキャッチコピーが振られていた。この第8集のコピーは「大戦末期に登場し、日本全土を焼け野原にしたB−29のすべて!!」というものだった。B−29が北海道を焼け野原にしたという事実は無いが、本書の内容がB−29のすべてを解説しているというのは過言ではない。
米軍のマリアナ沖海戦、硫黄島攻略が立て続けに成功し、日本本土を爆撃するための地上基地が南方諸島に急速に設置され、東京、大阪などの大都市が爆撃され軍事工場が大打撃を受け、更には東京大空襲で民間人が大量に死傷し、果ては原爆投下に至るまで、本土防空戦力もほとんど役に立たず米軍のなすがままに攻撃を受け敗戦へと追い込まれていった帝国陸海軍のドキュメントは、本シリーズとしては余りにも悲惨過ぎる。
本書を読んでの最大の収穫は、「絨毯爆撃」とは正しくはどのような意味であるかが理解できたことだ。
本土の都市空襲で実行に移された絨毯爆撃とは、このようなものだ。
爆撃機の編隊が仮に5機の横隊で爆撃するものとし、左から順にA,B,C,D,Eという爆撃エリアを各機が担当すると想定する。各爆撃機は爆撃が有効な幅員分の間隔を取り飛行する。この時最初にA,Eの2機が爆撃を行う。するとA,Eエリアで建物を焼かれて逃げる市民はB〜Dの未爆撃のエリアに移動して来る。次にB,Dのエリアを2機が爆撃すると今度は残ったCのエリアに市民が移動して来る。最後に建物と市民を殲滅するために残りのCエリアを1機が攻撃するというものだ。こうすれば5機が同時に爆撃するよりもはるかに多くの市民を死傷させることができる。これが本当の絨毯爆撃だ。
また、原爆を投下したB−29、(エノラ・ゲイ)は2機共に日本軍の戦闘機に遭遇することも無く、易々と任務を遂行したらしい。それも米軍のB−29には護衛の戦闘機も配置せずにだ。これは、本土決戦用に残されたパイロットや戦闘機、高射砲台が陛下を守る目的で東京周辺に集結されていたからだろう。この様に本書には終始、日本軍の活躍は出て来ない。やられるだけの真っ暗なドキュメントだ。
最後に本書のレア度については数日前に書き記した通り、程度の良いモノが単独で出品されることは極めて珍しい。本シリーズの古本による全巻収集に挑む方には、本書の獲得には最大限のエネルギーを傾けることを勧める。

これで「写真で見る太平洋戦争」全巻収集達成レポートの連載は終わりだ。
次回からは、私の「オークション戦記」として、Yahoo!オークションで体験した喜怒哀楽を綴るシリーズを開始する。お楽しみに。