第7集 壮烈!水雷戦隊

第7集 壮烈!水雷戦隊 レア度:B(レア)

再述するが、私はこの本を泣きながら読んだ。
一般に海戦の花形は戦艦や空母の戦闘であり、駆逐艦などは脇役とされ、その活躍が戦記ドキュメントとして紹介されることは少ないゆえ、本書は貴重である。
本書では前書きから「駆逐艦乗りは、みんな良い人ばかりで、普段は多少ノロマな兵士でも、戦闘が始まるとリスのように機敏に動いた。命令があればどんな辛い任務でも負けん気を出して乗り切った。こんな人たちの活躍があったことを分かって欲しくてこの本を書いた。」と始まっている。
内容は、実戦では駆逐艦乗り達はどのように海軍魂を発揮して戦ったのかという詳細ドキュメントが大半で、凄まじい戦闘状態の記録が続出する。ある船長(駆逐艦は軍艦ではなく、船としか呼べないため、艦長ではなく船長だ。)は、敵急降下爆撃機の襲来時は60度の三角定規をかざして空を見上げ、「あの爆撃機は当たらないから放置、あれは当たるから回避・・・」と判断し、爆撃時の轟音、爆音で声が届かないので操舵員の肩に足を乗せ、舵をとる方向の肩を踏んで操舵命令を伝達したという。
旧日本軍の駆逐艦は船体の鋼板が7mmしかなく、ドラム缶並みの船体などと呼ばれていた。ただ防御力を大きく勝る攻撃力を発揮できるよう設計されていたため、少しでも攻撃できるチャンスがあれば防御、回避に優先して攻撃に出たという。脇役ではありながら実に勇敢な姿勢で数々の海戦や物資の輸送、戦地に残された兵士の救助に活躍したのだ。
本書の最後には、攻撃を受けた船体が浸水し始めたのを、船艙に木材を当て、体を当てて浸水を食い止めつつ死んだ3人の兵士の美談が出て来る。どの駆逐艦乗りも協調精神を忘れない、いい人ばかりだったのだろう。
著者は明治末期生まれの、軍の元高級将校であるが、きっと今はこの世にはいないだろう。涙を流せるような美しい戦記も、もうこれ以上世に出ることは無い。
本書のレア度はBとした。私の記憶では、本書が単独でオークションに出品されたことは3度(私の落札を含む)しかない。私以外に見事落札された方は、本書を大切に保管して欲しい。

次回は、最終巻の第8集について述べる。