黒潮発電は、実に愚かなアイデア

 原発反対論とは、もともと一昔前の自民党政権を打倒するためにあらゆる面から政権への反対を唱えた一連の屁理屈論のうちの一つである。
 福島原発放射能漏れ災害で、反対派が一躍これ見よがしとばかりに支持を集めているが、肝心の代替発電方法については温室効果ガスの排出を一層増やすだけの火力発電や、出力が大きく取れないことが問題の水力、風力、太陽光発電程度しか提案していない。
 水力発電については、戦後より昭和40年代まで、多くの地域で貯水ダムと発電施設が建造されていたが、これ以降建造されなくなったのは、採算の合う有力な発電用水源がなくなったからである。
 但し、家庭・小集落規模の水力発電は、水利権に関連する法整備がなされていないため民間での設置が許されずほとんど使われていないが、送電設備に多額の費用が掛からないという点では今後有望だろう。
 風力、太陽光発電については、ある程度強力な風や日光が継続して発生しなければ発電できない。特に太陽光発電は投資が巨額になり、財政危機に悩むこの国の現状では充分な予算は配分されないだろう。
 さて、あるWEBサイトを見ると、原発反対論者が黒潮発電という今までにない発電方法を提案しているということを知った。
 これは、太平洋を流れる海流(黒潮)に沿って大規模な水車を設置し発電するというシステムで、計画通り完成すれば、現行の原発の総発電量の4倍を発電できるという。またアメリカがこのアイデアに興味を示しており、知的所有権としての販売も検討中であるということだ。
 私の発言については過信、妄信はして欲しくないが、私独自によるリモート・ヴューイングで検証すると、この方法で現行の原発の総発電量の4倍を達成可能という試算は正しい。
 だが、この発電設備が実際に稼働するかの見通しは限りなく0である。
 期待通りの発電をさせるには、合計面積で日本国土の総面積に匹敵するような巨大な水車を海中に「固定」しなければならない。この固定作業は船舶を海に浮かべ、多数(いや、無数)のアンカーを海底深く打ち込み、これによって水車、発電用モーター、送電設備などの大規模構造物を、強い海流のある海中に設置するという、超巨額の投資を必要とする大規模工事になることは間違いない。
 更に、ただ海中に水車を設置しただけでは、水車の抵抗力をよけるために海流の方向が変わったり、水車近くの海水面が上昇するなどして損失が発生し、海流のエネルギーを有効に利用できなくなることは必至だ。現行原発の総発電量の4倍という試算は、この損失分を考慮していない。
 しかし、この国の建設業の経済構造は、自民党政権時代から約15年続く公共工事削減主義ですっかり弱体化している。実体を見ても、建設業は儲からないというイメージが浸透し、有能な技術者、職人が激減し続けている。
 黒潮発電を稼働させるくらいならば、中国やロシアの内陸部に大規模な原発を建造し、日本まで続く送電設備を敷設した方が安上がりで現実的なのではないだろうか。
 中国の笑い話に、このような物がある。
 中国の河はとても広く、対岸など見えないところもある。
 ある所の、とても広い河の対岸の村人が来て、自分たちの村の自慢話をした。
 「俺たちの村には、それはとても大きい太鼓があって、この太鼓を叩けば、おまえ達の村にも聞こえるはずだ。」
 相手をした村人は、こう返した。
 「ほうほう。私たちの村にはとても大きい牛がいて、首を伸ばすと、あなた方の村の草を食べることができるのだよ。」
 対岸の村人は、これを聞いて「何をふざけたことを言っているんだ。そんな巨大な牛がこの世のどこにいると言うんだ!」と怒鳴った。
 相手をした村人は、こう付け加えた。
 「それほど大きい牛がいなければ、あなたの言う大きな太鼓も、作れはしない。」
 原発反対派に言いたいが、ホラ吹きにも、一定の限度が必要だということだ。